片渕須直監督最新作『つるばみ色のなぎ子たち』京まふでのステージイベントレポートが到着!

 

『この世界の片隅に』(2016)、『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』(2019)に続く、現在鋭意制作中の、片渕須直監督最新作『つるばみ色のなぎ子たち』は、枕草子が書かれた千年前の京都を舞台に、清少納言が生きた時代を描く映画。
構想6年、本作は片渕監督の徹底的な研究と調査と綿密な分析によって制作されている。

9月16日(土)、片渕須直監督劇場最新作「つるばみ色のなぎ子たち」のステージイベントがロームシアターで開催された「京都国際マンガ・アニメフェア2023」内で行われた。
ステージには片渕監督が登壇し、併せて本作初の「パイロット映像」が公開されました。発信現時点までに、YouTubeチャンネルで配信されたパイロット映像は、公開から9日間に累計10万の再生回数を突破。
公開時期未定の作品ではありますが、既に大きな話題性を集めている。

今回、本イベントのオフィシャルレポートが到着した。

 

 

京都国際マンガ・アニメフェア(京まふ)2023 つるばみ色のなぎ子たち ステージ概要

■日時:2023年9月16日(土) 17:00-17:40
■場所:ロームシアター京都 (〒606-8342 京都市左京区岡崎最勝寺町13)
■登壇:片渕須直 監督( 『この世界の片隅に』 )
■内容:『つるばみ色のなぎ子たち』パイロット映像解禁、片渕須直による作品についてのトークショー

 

 

京まふ2023映画「つるばみ色のなぎ子たち」スペシャルステージ オフィシャルレポート

『おぼろげな輪郭が見えてきた片渕監督最新作「つるばみ色のなぎ子たち」のこだわり』

片渕須直監督劇場最新作「つるばみ色のなぎ子たち」のステージイベントが9月16日(土)にロームシアター京都で開催された「京まふ2023」内で行われた。ステージには片渕監督が登壇し、併せて本作初の「パイロット映像」が公開された。

登壇した監督より最初に、パイロット映像の公開に先駆け、これまでの作品について語られる。

片渕:最初に作った映画が『アリーテ姫』という作品で、構想から公開までで8年かかりました。次の『マイマイ新子と千年の魔法』は2009年に公開されたのですが、そのあとの『この世界の片隅に』もそこから7年かかっています。『つるばみ色のなぎ子たち』も2017年から構想を始めていてすでに6年かけています。6年たってようやくこれだけの長さ(3分35秒)の映像ができました。

先日5月にタイトル発表された「つるばみ色のなぎ子たち」は、その多くがベールに包まれており、これまでキーワードやヒントのようなものだけが時折公開されるだけだった。

 

 

片渕:映画の全貌はまだ見えてきません。けれど、これから公開される3分30秒ほどの映像の中に、皆さんが新しいものをくみ取っていただけるとありがたいと思っています。

まだほとんど内容が情報解禁されていない作品にもかかわらず、本イベント内で発売されていたグッズが完売していたことにも触れられて、その期待感にこたえるように、さっそくパイロットフィルムが公開された。
公開後、観客から自然と拍手が起こった。

片渕:6年前からやっていたものが、ようやくこれだけの長さのものができて、皆さんにご覧いただけたというのは、とても感慨深いものがあります。この映画の舞台は京都なので、この京まふでその機会が得られたことを本当ありがたいなと思っています。

片渕監督は一番最初に映像を見た人々表情を感慨深く眺めながら、この機会が得られたことにうれしく、そして少し安堵した様子で語った。

片渕:『マイマイ新子と千年の魔法』(2009年)という作品には、なぎ子ちゃんという女の子が出てくるのですが、この女の子はこの作品の舞台・山口県防府市に住んでいた8歳の清少納言として描いています。その女の子が大人になった時の世の中ってどうなっていたのだろうと思ったことがこの映画を作った最初のきっかけです。

長年の思いが一つになって制作されている「つるばみ色のなぎ子たち」。その制作を支えるメインスタッフについても監督より改めて紹介された。

片渕:もちろん、自分ひとりの力ではなくて、作画監督の安藤雅司さん、監督補の浦谷千恵さんの力がなければここまでたどり着くことはできませんでした。そして、美術監督として新しく金子雄司さんにご参加いただいています。前に水谷利春さんにお願いをしていたのですが、作品の制作期間が長くなってしまっていることもあり、若い金子雄司さんにバトンタッチをしました。

金子雄司さんは、「アイの歌声を聞かせて」や「ジョゼと虎と魚たち」など近年の話題作で活躍している美術監督だ。そのこだわりは、手描きによって背景を描くことにあるという。

片渕:金子さんは、アニメーションが今までやってきた筆で絵を描いてきた道のりを残したいとおっしゃってくださっていて、この作品にもその技術を残して画面を作ってくださっています。

さらに、音楽の千住明さんについても言及された。会場には千住さんも来場していて、観客より拍手が送られた。

片渕:千住さんとは、ずいぶん前から千年前の雅楽についての楽器や音について、勉強会などを開かせていただいていました。その要素がこれから作品の中で実現していくのだろうなと期待しています。

改めて、観客の表情を見て監督が語り掛ける。

片渕:どうでしたでしょうか? 皆さんの予想通りだったでしょうか? この映像の中で皆さんが何を見つけていただけたでしょうか?
たくさん子供たちも出てきたし、倒れた人も描かれていました。

前作『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』を制作していたあたりで世の中がコロナで大変なことになっていきました。この映画を志した2017年にはまだそんなことは全くなかったのですが、たまたま世の中のほうがこのようなパンデミックになってしまいました。自分たちがこの作品を作る意味みたいなものが新たにのしかかってきています。

 

 

パンデミックという現代の情勢と「つるばみ色のなぎ子たち」の関連性。この作品の舞台となる千年前の京都は、教科書のようなのどかな雰囲気ではなく、感染症などをはじめとした多くの理由で多くの人が死に絶える時代だったという。

片渕:清少納言が描いた『枕草子』を、もう一度新しい自分たち独自の視点から読んでみると『その時私たちは色のない服を着ていた』という描写があります。色がないというのはティザービジュアルに描いた服のことです。
(千年前は)色とりどりの十二単だけではなくて、色がない喪服を着ていた時代だったわけです。つるばみ色というのは喪服の色だったりします。びっくりするぐらいたくさんの人が亡くなっていて。近しい人がなくなると喪服を着る。やっと喪服を脱いで色のついた服が着れると思ったら、また誰かが亡くなって喪服を着る。そんな世界の中で、大人になったなぎ子ちゃんは「私たちは打ちひしがれてない」とおそらく枕草子に書いていたのではないかと思ったりしています。自分たちもその気持ちに励まされたりしています。

とはいえ、それだけがすべての映画ではないということだけは、今、お伝えしておきたいです。おそらく完成はまだ数年先になるとは思うのですが、折に触れていろいろまた別のものをお見せしていけたらなと思っています。

既存のイメージとのギャップ。そしてそこにある魅力を語る片渕監督。そして、そこについてきてほしいと語ると、観客から拍手が送られた。

また本作制作にあたり、片渕監督は様々なことを一から徹底的に調べ直している。「千年前は本当にわからないことだらけです。」と語りながらも、それ分かったときや、映像にアウトプットできた時の達成感に嬉しさも感じるという。

片渕:『この世界の片隅に』は、昭和の時代で7,80年前なので写真もあり調べることができましたが、千年前には写真がありません。
実は絵巻物もなく、それが描かれるのはこの映画の200年後なんです。どんな服を着ていたのだろう。どんな風に彼女たちは生きていたのだろう。
少しずつ調べて、積み重ねて出来上がったのが今回の映像です。

 

 

映像の中についても少しだけ触れられた。

片渕:平安時代の地面をここまで描いたのは初めてのことなのではないかと思っています。土だけではなくて石が撒かれていて、半分地面に埋まっていて。そしてかつて京都は沼地だったため、そこからまだ水が抜けきっておらず、びしょびしょなところがたくさんあったんです。そこを牛車で走ると轍ができるわけです。その轍がここ数十年で発掘されて、それで牛車の車輪の幅がわかりました。
160センチ幅の牛車に4人の人が乗っていることがわかると、それは軽乗用車と同じ大きさで…。エンジンは牛だけど4人乗りだし一緒だなぁと思って。牛車のスピードも、うちの新人から育った若いアニメーターが計算して時速を出して、そうしてシーンを描いていて。そういったことをちょっとずつちょっとずつ、千年前はこうだったんだと確かめながら、画面を作ってきています。
それは、それが自分たちの想像で描くよりもずっと楽しくて。想像の力をこらして画面を作ることは楽しくてアニメーションの醍醐味ではあるけれど、現実を見つけ出して画面にする。そうした作り方もあるわけです。その中で動いている牛車もあれば、歩いている人も描く。

想像で描かず、自分たちで一つ一つ丁寧に確かめたものを持ち寄って、映画を作る。片渕監督の、そしてスタッフのこだわりの一面が垣間見える。

 

 

片渕:たくさんの子供たちが画面に映し出されました。英語のタイトルは、日本語に訳すと『喪に服す子供たち』という意味になりますが、関係あるのかどうか…。
千住明さんは、楽曲にわらべ歌のニュアンスを入れてくださっています。
あの時代の子供たちがどんな風に生きたのか。当時のものから見つけ出して映画として描いていこうと考えております。少しつらい予感もしているけれど、そういうものも全部携えて、映画の完成までの道のりを歩いていきたいなと思います。

雅やかさからかけ離れた千年の京都の風景に子供という要素。まだまだほかにも、映画の全容に至るヒントがパイロット映像の中にありそうだ。

片渕:映画作る人というのは少し変わっていて、特にアニメーションを作る自分は、すでに自分の中でもう映画はできているんです。それを順番に絵にするから、時間がかかって多くの人の力を借りて、画面にしていかなければならないのですが、自分の中ではこういう映画になるというのがもうできている。
それをいつか皆さんと一緒に、大きな映画館で、響き渡る音とともに味わえたらなと思います。
それが今、この最初のパイロットフィルムに抱く思いです。
まだまだ時間はかかりますが、これからも皆さんと一緒に歩んでいけたらと思いますので、よろしくお願いします。

応援ではなく一緒に歩んでほしいと、本ステージの多くの場面で語った片渕監督。

鋭意制作されている「つるばみ色のなぎ子たち」は、MAPPA関連会社・コントレールで新人育成も併せて制作されている。ベテランと新人をはじめとしたスタッフ、そして、観客も含めて一緒に千年前に向かうその旅路に期待が膨らむ。

片渕監督に観客からの盛大な拍手が送られ、イベントは終了となった。

 

映画『つるばみ色のなぎ子たち』パイロットフィルム|The Mourning Children Teaser 1
https://youtu.be/G3A9K2PbP3Y?si=F6i5KGMDrlCUb-Us

 

The Mourning Children: Nagiko and the Girls Wearing Tsurubami Black|Teaser 1
https://youtu.be/TbqcEMJN5gw?si=d-d1jGn3B7-lJE39

 

 

 

☆作品詳細

つるばみ色のなぎ子たち

原作・監督・脚本:片渕須直(この世界の片隅に/マイマイ新子と千年の魔法/アリーテ姫)
監督補:浦谷千恵(この世界の片隅に/マイマイ新子と千年の魔法/鉄コン筋クリート)
作画監督:安藤雅司(鹿の王 ユナと約束の旅/君の名は。/もののけ姫)
美術監督:金子雄司(機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島/アイの歌声を聴かせて/ジョゼと虎と魚たち)
音楽:千住明(VIVANT/鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST/大河ドラマ 風林火山)
制作:株式会社コントレール

・公式ホームページ:https://tsurubami.contrail.tokyo/

 

映画『つるばみ色のなぎ子たち』 題名公開映像 | The Mourning Children Title Release Teaser Trailer(2023)
https://youtu.be/XQlROaQBfyE

 

©つるばみ⾊のなぎ⼦たち製作委員会/ クロブルエ