予測不能なストーリーで話題を呼んだオリジナルTVアニメ「オッドタクシー」を手掛けたクリエイタータッグ・木下麦(監督・キャラクターデザイン)×此元和津也(脚本)と、国内外の映画祭で注目を集めた『映画大好きポンポさん』『夏へのトンネル、さよならの出口』を手掛けた制作スタジオ・CLAPによる、新作オリジナルアニメ映画『ホウセンカ』が現在制作中。
本作は6月10日より開催中のアニメーションシーンで世界最大規模として知られるアヌシー国際アニメーション映画祭にて、監督をはじめとしたスタッフ自らが制作中の作品について語るプログラム「ワークインプログレス」に選出。フランス現地時間12日に監督・キャラクターデザインの木下麦、コンセプトアートを担当したミチノク峠、そして制作スタジオCLAPのプロデューサー松尾亮一郎が登壇した。
今回ワークインプログレスに選出された長編映画、全14作品のうち、日本からの作品はわずか2作品。注目度が高く、当日会場には入場を待つ人々が長蛇の列を成した。満席となった会場には現地でアニメを学ぶ学生や若手クリエイターを中心に、熱心なアニメファンが集い、熱気に満ちあふれた。
オリジナル作品ということもあり、その内容は謎に包まれている本作。「オッドタクシー」以降、初の長編作品を手掛ける木下監督は、企画の始まりについて、「「オッドタクシー」の制作を経て、次回作では「ヤクザもの」や「人の道を外れたキャラクターの物語」を描きたいと思っていました。脚本の此元さんとも良好な関係だったので、また一緒に作品を作りたいと思い、僕の方から此元さんに簡単なシチュエーションのアイデアを文章で5つくらいまとめて此元さんに相談して、話を作っていきました」と語った。
また、今回、アニメスタジオCLAPと木下監督は初めて共に長編作品を制作する。CLAPの代表取締役でありながら本作のプロデューサーを務める松尾は、木下監督のキャラクターデザインについて「「オッドタクシー」を観ていた時からオリジナリティがあると思っていました。一度見たら忘れない、印象的なデザインで、キャラクターの描き分けもできていて、それぞれの性格も見えてきます。図形をベースにして描くなどアプローチも面白くて、今回の作品で新しいものづくりができるんじゃないかなとワクワクしたのを覚えています。ストーリーと紐づけて練って作られているのも素晴らしいですね。当初、監督にはキャラ原案だけ担当頂いて、キャラクターデザインは別の人を起用する案もあったんですが、ここまで描けるのであればその必要はないなと思いました。」とその魅力を、熱とともに伝えた。
共にステージに登壇した、コンセプトアートを担当するミチノク峠も木下作品には初の参加となる。参加の経緯について「シナリオがある程度形になっていた頃に、木下監督からお声がけ頂いて、コンセプトアートという役割でイメージボードを描くことになりました。」と話した。
作品の情報解禁時に使われたイメージビジュアルが本作の最初のイメージボードだったという。木下監督は「もともとミチノクさんのファンだったのでお声がけしたのですが(このイメージボードを)最初にみた時点で、求めていたものに98%近かったです。お願いして良かったと思いました。」と絶賛していた。
プレゼンテーションでは制作中のキャラクターデザインをはじめコンテ、イメージボードなやテストカットなどが披露され、終了後には観客とのQ&Aが実施された。それぞれ影響を受けた作品から制作における技術的な質問まで、時間が足りなくなるほど多くの質問が寄せられた。
最後に木下監督と松尾プロデューサーが「来年またアヌシーに戻ってきます!」とステージから客席に向かって声をかけ、大きな歓声が上がった。終了後は、登壇の3人を多くのファンが囲み、完成を心待ちにする思いを伝える一幕もあった。
ワークインプログレスが行われた会場での熱気はもとより、今回のアヌシー国際アニメーション映画祭参加に合わせて、海外メディアからの取材も数多くオファーを受けていることから、本作の海外からの注目の高さが伺える。
現在絶賛制作中ということで国内、そして世界での公開はまだ未定だが、完成を楽しみに今後の展開にぜひ注目したい。
☆作品詳細
映画『ホウセンカ』
STAFF
監督・キャラクターデザイン:木下麦
原作・脚本:此元和津也
コンセプトアート:ミチノク峠
企画・制作:CLAP
■■クリエイタープロフィール
■木下麦
アニメーション監督/イラストレーター
多摩美術大学在籍時からイラストレーター/アニメーターとして活動。
アニメーターや監督補佐を経て、オリジナル TV アニメーション『オッドタクシー』で 自身初となる監督、キャラクターデザインを担当。同作でCrunchyroll Anime Awards 2022 / Best Director、第25回文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門 新人賞などを受賞した。
アニメーションの演出やコンセプトアート、キャラクターデザインなど幅広く活動分野を広げている。
P.I.C.S.management所属。
■此元和津也
漫画家/脚本家
2013年〜2017年に連載した漫画『セトウツミ』が、映画化&ドラマ化の大ヒット作品となる。2019年、映画・ドラマ・Huluオリジナルストーリー展開の『ブラック校則』で、本格的に脚本家としての活動を開始。2021年に放送されたTVアニメ『オッドタクシー』でオリジナル脚本を手掛け大きな話題を呼んだ。
現在は独自の作家性を生かして、漫画以外の領域へも活動の場を広げている。
P.I.C.S.management所属。
■CLAP
2016年に、アニメーションプロデューサーの松尾亮一郎が設立。
映画作品を中心に、高品質な映像作品を手掛け続けるアニメーションスタジオ。
制作作品に、『映画大好きポンポさん』(2021年)、『夏へのトンネル、さよならの出口』(2022年)ほか。『夏へのトンネル、さよならの出口』は、2023年アヌシー国際アニメーション映画祭ポール・グリモー賞、第32回日本映画批評家大賞をそれぞれ受賞している。
■ミチノク峠 -MICHINOKU-TOGE
アニメーションクリエイター/ゲームアートデザイナー
ゲーム会社にてコンセプトアート業務。その後、フリーランスへ。
映画、アニメ、ゲーム等のコンセプトアート業務その他活動する傍ら、ショートアニメーション制作中。
■■アヌシー国際アニメーション映画祭「Work in Progress」
・会期:6月9日〜6月15日
・日時:6月12日(水)16:30 ※『ホウセンカ』ステージ
・場所:ピエール・ラミー・ルーム
https://www.annecyfestival.com/