2023年3月10日(金)から3月13日(月)まで池袋で開催される国際アニメーション映画祭「東京アニメアワードフェスティバル 2023(TAAF2023)」 。
毎年、世界各国から優秀な作品が多数応募されるTAAFのコンペティション部門。本年度の長編アニメーションは26の国と地域から応募された31作品(昨年31作品)より、4作品がノミネート。短編アニメーションは63の国と地域から応募された872作品(昨年874作品)より、29作品がノミネートになった。
<フェスティバルディレクター・竹内孝次 コメント>
本年度の作品群は、新型コロナウイルス感染症と戦争という、ふたつの大きな影が世界を覆っていることを感じさせます。これはクリエイター達の反応として自然なことです。しかしそのような中にあっても、それらを乗り越えて行こうというエネルギーを感じさせてくれるのは嬉しいことです。本年度はこれら映像の制作者たちも来日してくれることになっています。彼らの声を届ける企画も立てていますので、映像と共に楽しみにしてください。
~ コンペティション部門 ・ 長編アニメーション ~
<フェスティバルディレクターのコメント>
本年度の作品群の特徴をひと言でまとめると「歴史」ということかなと思います。私史、家族史、世界史と規模と拡がりは様々ですが、時間の流れの中でものを考えさせる作品たちです。
4作品とも、ストップモーションあるいは手描きという、今の主流である3DCGとは違う手法で作られているというのも興味深いですね。丁寧に作られていることが、作品の楽しさと共に感じられて来ます。
■お祖父さんの悪魔たち(My Grandfather’s Demons)
監督:Nuno Beato
製作国:ポルトガル・スペイン・フランス/1時間25分/2022年
<フェスティバルディレクターのコメント>
主人公のロサは、都会の成績主義の職場の成功者。しかし一方ではストレスで爆発寸前です。その彼女が、亡くなった祖父の遺産である田舎の農場の後始末に出かけます。
3DCGで都会部分の描写が始まり、モダンさを感じさせ、祖父の農場からはストップモーションという見るからに素朴な様相に一変します。祖父とうまく行かなかった母親とロサ。そして、祖父の抱えていた問題。村人から向けられる排他的な目。それらが一挙に解決する結末へと進みます。ドラマとして楽しんでください。
■私の結婚と恋話し(My Love Affair with Marriage)
監督:Signe Baumane
製作国:ラトビア・アメリカ・ルクセンブルク/1時間48分/2022年
<フェスティバルディレクターのコメント>
絵本のような温かみのある絵で作られたアニメーションです。旧ソビエト連邦に生まれた主人公ゼルマの半生がモノローグで語られます。移り住んだ場所、そこでの体験、そしてなによりも恋愛やSEXについての彼女特有のものの見方が、時々科学的解説が飛び込んだりして、面白おかしく伝えられます。「あれあれ、彼女はそんなことを考えてるんだ」と驚くことも度々です。彼女が一般的な女性なのかどうか分かりませんが、物語りというより彼女自身の講義を受けているような感じで映画を最後まで見てしまいます。
©Signe Baumane
■犬とイタリア人お断り(No Dogs or Italians Allowed)
監督:Alain Ughetto
製作国:フランス・イタリア・ベルギー・スイス/1時間10分/2022年
<フェスティバルディレクターのコメント>
1900年頃のお話しです。制作者の祖父である、イタリア・アルプスの貧しい村で育った男の一生です。家族史ですが、大戦で徴兵されたり、スペイン風邪に村の半分が死んでしまったりと、史実が織り交ぜられていて、世界の潮流がドラマの中に見えて来ます。時々画面に入り込んでくる作者の手は、「私のお祖父さんの話しなんですよ」と、嫌味なく私たちに語りかけてくれて、これも親近感を覚えます。過酷な暮らしぶりを悲壮感なくユーモアたっぷりに語り、当時使われた道具類も、どうやって使っていたかを含め丁寧に再現されていて、実写以上に生きた実感の詰まった映画になっています。
■ティティナ(Titina)
監督:Kajsa Næss
製作国:ベルギー・ノルウェー/1時間30分/2022年
<フェスティバルディレクターのコメント>
探検家アムンゼンとイタリア人飛行船乗りノビルの友情と人生を描いた物語りです。飛行船で北極点に到達するという史実を基に、冒険旅行を共にした二人の功名心。そして嫉妬心からの喧嘩別れ。と、こう書くと男のエゴがぶつかり合う嫌なドラマみたいに思えるんですが、そうではありません。とにかく画面が綺麗なんです。イタリア、ノルウェーやヨーロッパの街並みあり、北極という銀世界あり。それらが時にはデザイン的に処理され、美しい画面になっています。これは大画面で観るべきです。
©Mikrofilm and Vivi Film
~ コンペティション部門 ・ 短編アニメーション ~
●スロット1 子供を含む全世代向け(全7作品)
<フェスティバルディレクターのコメント>
本年度の特徴は手描きだけでなく3DCGであっても、どことなく手触りの温もりを感じさせる作品が多いことでしょう。ご覧になれば、きっと主人公に共感していただけると思います。人間だけでなく、可愛いクモやキツネ、そして何なのかよく分からない生きものも登場します。
今回の学生賞受賞作品は、このスロットであわせて上映します。奇妙でおおらかな作品ですよ。
●スロット2 小学生くらいからの全世代向け(全12作品)
<フェスティバルディレクターのコメント>
老いること、戦争、ヴァーチャルゲームを取り上げた作品があります。世界のどこであっても関心の高い事柄なんですね。それらを心に浸み入るように語ってくれています。字幕を追わなければならない作品は数点あります。しかし、小学校3年生くらいなら楽しめると思います。エンドマークを見終わって、一瞬「えッ!?なんだったんだろう?」と思うかもしれません。でも、次の作品までの暗い中で、「ああ、そういうことか」と納得の笑みが浮かぶと思いますよ。
●スロット3 大人向け(全10作品)
<フェスティバルディレクターのコメント>
考えさせる、ということで大人向けです。タイトルと映像を観て考える、知的ゲームのようなものです。作者の手口にはまらないよう、気を張りつめて観て下さい。1回ではなく、2回観て頂かないと謎の解けない作品もあるかもしれません。お楽しみに。
ノミネート作品の詳細は以下よりご確認頂けます。
https://animefestival.jp/ja/post/16718
TAAF2023 「学生賞」が決定!
コンペティション部門短編アニメーションに応募された作品の中から、日本国内の教育機関で学ぶ学生の作品を対象に、一次選考委員が審査を行い、TAAF2023コンペティション部門学生賞は『サカナ島胃袋三腸目』(監督:若林 萌)に決定いたしました!学生賞受賞作品はTAAF2023開催期間中に「スロット1」にて上映いたします。
★学生賞受賞作品
■サカナ島胃袋三腸目(3 Intestine Road, Fish Island)
監督:若林 萌
学校名:東京藝術大学/17分12秒/2022年
<あらすじ>
魚の腹の奥底に暮らす、豚、魚、オタマジャクシの三人家族の物語。
ある日突然、漂着した果実を皮切りに彼らの暮らしは一変する。
© 2022 Moe Wakabayashi
<若林 萌 Moe Wakabayashi・プロフィール>
1992年神奈川県生まれ。2015年多摩美術大学造形表現学部映像演劇学科卒業。
2022年、東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻修了。
■TAAF2023 コンペティション部門 一次選考委員
※五十音順・敬称略
<長編アニメーション>
●伊藤 響(株式会社タツノコプロ 代表取締役社長)
●キム・ジュニアン(新潟大学 経済科学部 学際日本学プログラム 准教授)
●西岡 純一(株式会社スタジオジブリ 広報・学芸担当スーパーバイザー)
●鈴木 路子(プロデューサー)
<短編アニメーション>
●粟飯原 君江(元 株式会社白組 アニメーションプロデューサー)
●五十嵐 淳之(日本電子専門学校 クリエイター教育 部長)
●数井 浩子(アニメーター・演出/京都精華大学 マンガ学部 准教授)
●近藤 左千子(株式会社pHスタジオ 代表取締役/アートディレクター)
●清水 洋(アニメーター)
●宮澤 真理(お弁当アーティスト/アニメーション監督)
●森田 実(アニメーター)
●万木 壮(株式会社KADOKAWA ライトノベル/新文芸統括部 統括部長)
一次選考委員からのコメントは以下よりご確認頂けます。
https://animefestival.jp/ja/award/competition/selectioncommittee
■フェスティバルディレクター 竹内孝次・プロフィール
1976年に日本アニメーションに入社。『母を尋ねて三千里』『あらいぐまラスカル』『未来少年コナン』『赤毛のアン』の制作に携わる。1980年、テレコム・アニメーションフィルムに移籍。『名探偵ホームズ』『じゃりン子チエ』『ルパン三世』『リトル・ニモ』等テレコム作品の制作に携わる。1990年代を中心に、ロスアンゼルスにも拠点を持ち、ディズニー、ワーナー・ブラザース等との合作作業、カナダ、フランス、韓国等とも合作作品を展開する。元テレコム・アニメーションフィルム社長。2013年アニメーション教育研究のためパリ・ゴブラン学校で学ぶ。2011年より、アニメーションの人材育成にも意欲的に携わり、産官学連携事業の「アニメーション・ブートキャンプ」をディレクターとして東京藝術大学と共に実施しており、2015年より、同プログラムを日本のみならず、シンガポール、タイ、フランス等でも実施。2020年には、本事業を行う団体として一般社団法人日本アニメーション教育ネットワークを立ち上げ、理事を務める。2014年より2019年まで、文化庁事業・日本動画協会受託の「あにめたまご」のディレクターも務めた。
2016年より東京アニメアワードフェスティバルのフェスティバルディレクターを務めている。
東京アニメアワードフェスティバル 2023 開催概要
日程:2023年3月10日(金)~3月13日(月)
会場:東京・池袋
主催:東京アニメアワードフェスティバル実行委員会、一般社団法人日本動画協会
共催:東京都
事務局:東京アニメアワードフェスティバル実行委員会事務局(一般社団法人日本動画協会内)
公式サイト:https://animefestival.jp/
■東京アニメアワードフェスティバル(TAAF)とは
2023 年で 10 回目の開催となる東京アニメアワードフェスティバル(TAAF)は、2002 年より「東京国際アニメフェア」の一環として行われていた「東京アニメアワード」を独立・発展させた国際アニメーション映画祭です。
本フェスティバルは、新たな人材の発掘・育成、アニメーション文化と産業の振興に寄与すること、及び東京の魅力を発信し、東京の観光振興に資することを目的に開催します。
『東京がアニメーションのハブになる』を合言葉に、高いクオリティとオリジナリティに富む世界中の作品を東京で上映し、世界中のアニメーションを愛する人々との交流を図ること、クリエイターや観客に刺激と感動を提供すること、そしてその感動や刺激を糧にアニメーションの新たな波を東京から世界へ発信することを目指します。
■各アワードの紹介
<コンペティション部門>
広く国内外から、プロ・アマを問わず募集しています。60 分以上の長編アニメーション、30 分未満の短編アニメーションのそれぞれから「グランプリ」「優秀賞」他各賞を選出します。選考の柱となるのは、オリジナリティ、先進性、確かな技術、大衆性です。特に一昨年度から短編部門内に創設された「学生賞」は、日本でアニメーションを学ぶ学生のための賞となります。会期中には劇場にて、ノミネート作品の数々を、国内外の制作者と共にお楽しみ頂けます。
<アニメ オブ ザ イヤー部門>
日本国内で上映・放送された作品の中から、アニメファンが選ぶ「アニメファン賞」、アニメ業界のプロが選ぶ『これは観ておきたい』と思う「作品賞」、『この人に注目してほしい』と思う「個人賞」が投票で選ばれます。
<アニメ功労部門>
アニメーション産業及び文化の発展に寄与した方々を顕彰するものです。アニメーションの技術、表現だけでなく、人材育成を含む教育活動、国際交流など、広くアニメーション産業の社会的地位の向上に貢献された方々に、この賞を贈呈いたします。