6月7日(金)より全国公開される、五十嵐大介原作・STUDIO4℃制作の映画『海獣の子供』が、4月17日(水)に国立科学博物館で映画『海獣の子供』×「大哺乳類展 2」スペシャルトークイベントを開催した。
国立科学博物館で大好評開催中の「大哺乳類展 2」とのコラボイベントである今回のイベントは、漫画「海獣の子供」原作者の五十嵐大介、映画『海獣の子供』監督の渡辺歩、そして国立科学博物館動物研究部脊椎動物研究グループ研究主幹で「大哺乳類展2—みんなの生き残り作戦」を監修した田島木綿子博士が登壇。
歴史ある国立科学博物館 日本館の講堂で、<漫画>で、<アニメーション>でと、お二人ならではの“哺乳類をアートで表現する”という視点のお話や、田島博士が感じた『海獣の子供』について、作中の海棲哺乳類の生態についてなど、濃密トークが展開された。
アートから見る“海獣”たち!映画『海獣の子供』×「大哺乳類展 2」スペシャルトークイベント
【イベント名】
アートから見る“海獣”たち!『海獣の子供』×「大哺乳類展 2」スペシャルトークイベント
【日程】4月17日(水)
【時間】国立科学博物館閉館後 19:30〜
【場所】国立科学博物館 日本館 2 階 講堂(東京都台東区上野公園 7-20)
【登壇者】五十嵐大介(漫画「海獣の子供」原作者)、渡辺 歩(映画『海獣の子供』監督)、田島木綿子(国立科学博物館動物研究部脊椎動物研究グループ研究主幹)
【料金】無料
登壇者コメント
「海獣の子供」原作や映画を見た感想
田島博士:研究者としてはムムッと思うような、実際とは異なる生き物たちの表現もありますが(笑)、漫画や映画だからこそ好奇心が沸きたてられるファンタジー性と同時に、生き物や自然史の本質を描かれていたので、我々研究者と志は同じなのかなと感じました。「私たちはまだ世界のほんの一部しか知らない」という映画全体のコンセプトは、我々も研究する上で、分かっていることばかりではない、自然の一部しか見ていない、と常に思いながらやっているので、それが伝わってきて心地よかったです。
「海獣の子供」という題材について
五十嵐先生:図鑑を集めるのが好きで、よく図鑑を見ながら魚の絵を描いていました。ある時思い立って魚の隣に女の子が泳ぐ絵を描いたら、“フィッシュガール”というタイトルと結びつきました。フィッシュガール=人魚で、人魚のモデルになったジュゴンは、子供を抱えるように授乳する姿が人間に似ているということで、ではそれが本当に人間の子供だったらどうだろう、という発想から漫画へとつながっていきました。「海の子供」だと漠然とするので、「海獣の子供」にすればイメージが広がるのではないかと思い、タイトルを決めました。絵がシリアスっぽいのですが、ドキュメンタリーにはしたくなかったです。海の中はまだ解明されていないことが多いので、もしかしたらまだ見つかっていない種類がいるのでは?ということを想像しながら描いていきました。表現において、自分が描きたいと思ったことと事実がズレてたりすることがたまにあるのですが、例えば、漫画に出てくるマッコウクジラに少年が食べられるイメージは、上顎に歯があってマッコウクジラに見えるけど、未知のクジラで…という言い訳も考えています(笑)
シンボルとして描かれているザトウクジラについて
五十嵐先生:形が一番好きだったのと、胸ビレが長く、水中を泳いでいる姿がまるで空を飛ぶように美しく見えますし、お腹の白い部分や胸ビレを広げた時に人間に見えたら面白いと思い、意識して描きました。
渡辺監督:海獣たちの描写は、実物を何度も見て佇まいや動きを突き詰め、それらしい誇張を表現するよう努めました。あえて実物のクジラのサイズよりも大きく、胸ビレも長く描くことで、よりダイナミックになるように仕上げました。映画の中のクジラの<ソング>は本物のクジラの声をベースにしながら、映画的な演出を加えて作っていきました。
田島博士: 実はクジラにも視力があり、太陽光が照る水面から30mほどの場所やブリーチング、スパイホップ時にはその視力を発揮します。劇中でも印象的な、クジラがグッと見つめる目の描写は迫力があり、実際のクジラにも見られる動作なので、よくお調べになっているなと思いました。シルエットなどを意図して誇張されている分、迫力があり訴えたいものが伝わってくるのがアニメーションの魅力ですね。クジラの<ソング>には毎年流行があります。誰が流行を作るのか詳細は分かっていませんが、彼らの中でルールがあるようで、地域によって方言のようなものが存在することも分かっています。ザトウクジラはとても優しくて、シャチに狙われているアザラシを助けたりするんです。そういうことをするのは、我々の研究ではザトウクジラだけです。
映画製作にあたり意識したこと
渡辺監督:元々大好きな作品なのでハードルが高く、挑戦でした。マンガと同じ読後感にもこだわりました。原作が明確な答えや結論のない話なので、映画を作るときも、説明しすぎないようにして、なるべくふくよかに広く物語を完結させようと思いました。矛盾していますが、だからこそ琉花の目線で、琉花個人として辿り着くものに焦点を当てました。映画を観てくださる方によって見え方が変わると思いますし、そこを楽しんでいただきたいです。
≪登壇者プロフィール≫
原作 / 五十嵐大介
1969年生まれ。1993年、「月刊アフタヌーン」(講談社)で四季大賞を受賞し、デビュー。主な作品として文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した『魔女』や、小説家・伊坂幸太郎氏との競作描き下ろし作品『SARU』(小学館)などがある。2002~05年の『リトル・フォレスト』(講談社)は日本と韓国で実写映画化された。2009年には、初の長編作品『海獣の子供』で日本漫画家協会賞優秀賞を受賞。最新作は『ディザインズ』(講談社/2019年、完結巻発売予定)。
監督 / 渡辺 歩
1966年生まれ。86年にスタジオメイツに入社、同社で原画デビュー。88年にシンエイ動画へ移り、TV リーズ「ドラえもん」で原画・作画監督・演出など多岐にわたって活躍。劇場短編『おばあちゃんの思い出』(00)、劇場長編『ドラえもん のび太の恐竜 2006』(06)などを監督し、2011年よりフリーに。その後は TV シリーズ「謎の彼女 X」(12)、「団地ともお」(12~15)、「彼女がフラグをおられたら」(14)、「宇宙兄弟」(12~14)、「逆転裁判 ~その『真実』、異議あり!~」(16)など、精力的に監督作を発表。18年には「恋は雨上がりのように」「グラゼニ」「メジャーセカンド」と、監督を務めた TV シリーズが3本も放映された。本作は4本目の劇場長編となる。
「大哺乳類展2—みんなの生き残り作戦」の監修 / 田島木綿子
獣医学博士。
国立科学博物館 動物研究部 脊椎動物研究グループ研究主幹。
進化の過程で完全に後肢が退化したイルカ・クジラが、後肢が退化したことで周囲構造はどのように変化しているのか、どこまで哺乳類の一般型を維持しているのか、などを比較形態学的に研究。また、国内で年間300件以上の報告があるストランディング個体を調査し、なぜ海岸に打ち上がるのか、という謎を病気という観点から解き明かしている。
≪「大哺乳類展 2-みんなの生き残り作戦」概要≫
【会期】2019年3月21日(木・祝)~6月16日(日)
【会場】国立科学博物館(東京・上野公園)
【開館時間】午前9時~午後5時(金曜・土曜は午後8時まで)
※ただし、4月28日(日)~5月5日(日・祝)は午後8時まで、5月6日(月・休)は午後6時まで
※入場は各閉館時刻の30分前まで
【休館日】月曜日および5月7日(火)
※ただし、3月25日(月)、4月1日(月)、4月29日(月・祝)、5月6日(月・休)、6月10日(月)は開館
【料金】一般・大学生 1,600円、小・中・高校生 600円 他
【主催】国立科学博物館、朝日新聞社、TBS、BS-TBS
【問い合わせ】03-5777-8600(ハローダイヤル)/03-5814-9898(FAX)
★作品紹介
海獣の子供
6月7日(金)全国ロードショー
【原作】
五十嵐大介「海獣の子供」(小学館 IKKICOMIX 刊)
【キャスト】
芦田愛菜 石橋陽彩 浦上晟周 森崎ウィン稲垣吾郎 蒼井 優 渡辺 徹 / 田中泯 富司純子
【スタッフ】
監督/渡辺 歩
音楽/久石 譲
キャラクターデザイン・総作画監督・演出/小西賢一
美術監督/木村真二
CGI 監督/秋本賢一郎
色彩設計/伊東美由樹
音響監督/笠松広司
プロデューサー/田中栄子
【アニメーション制作】STUDIO4℃
【製作】「海獣の子供」製作委員会
【配給】東宝映像事業部
【映画公式サイト】www.kaijunokodomo.com
【映画公式 twitter】@kaiju_no_kodomo
【6.7公開】 『海獣の子供』 予告1(『Children of the Sea』 Official trailer 1 )
https://youtu.be/eVGbgBy_yo4
映画『海獣の子供』特報映像
https://youtu.be/XG0vQuTl_xQ
©2019 五十嵐大介・小学館/「海獣の子供」製作委員会