熱狂的ファンを持ついましろたかし氏による漫画「化け猫あんずちゃん」がアニメーション映画化!
久野遥子・山下敦弘がW監督を務め、俳優の森山未來が主人公の化け猫の声と動きを担当し、第77回カンヌ国際映画祭「監督週間」で公式上映され、アヌシー国際アニメーション映画祭2024 長編コンペティション部門にも正式出品するなど、世界中から注目を集める映画『化け猫あんずちゃん』が7月19日(金)より全国公開される。
本日、6月29日(土)に多摩美術大学で久野遥子監督・山下敦弘監督のスペシャルトークイベントが実施された。久野遥子監督の母校である多摩美の大学生たちへ向けた映画の試写会を実施したのち両監督が登壇、本作でカンヌ・アヌシーと国際映画祭の舞台を経た直後の両監督が、映画の裏側や海外映画祭のエピソードなど、芸術を学ぶ学生たちを前に本作について語った。
また、事前に募集した「化け猫あんずちゃん」、「猫」をテーマにした、多摩美術大学の学生達の作品を久野遥子監督と山下敦弘監督が特別講評&アドバイスを送った。
多摩美術大学スペシャルトークイベント概要
◆日時:6月29日(土) 15:00〜16:30
◆開催地:多摩美術大学 八王子キャンパス
◆登壇者:久野遥子(34歳)、山下敦弘(47歳)
◆MC:野村辰寿 教授 (多摩美術大学 グラフィックデザイン学科)
イベントレポート
映画の上映が終わり、多摩美の学生たちの暖かい拍手に迎えられた久野遥子監督と山下敦弘監督。
まずは久野監督の恩師でもあるグラフィックデザイン科の野村辰寿教授より監督のフィルモグラフィーを紹介。その中で、久野監督の卒業制作で第17回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門新人賞受賞作品でもある「Airy Me」を上映。野村教授は「作品が発表された時、業界を震撼させた」と当時を振り返り、山下監督も「改めてスクリーンでみると凄まじい迫力!」とそのクオリティに驚きの表情を見せた。
本作が作れたきっかけについて野村教授に尋ねられると、山下監督は「この企画はシンエイ動画の近藤プロデューサーによるもので、彼は昔、僕の作品の助監督で、他にも久野監督がロトスコープディレクターを務めた『花とアリス殺人事件』でも助監督をしていました。そんな彼がシンエイ動画に入って最初に立ち上げた企画が『化け猫あんずちゃん』でした。彼が久野さんと僕を引き合わせたっていうのがはじまりです」と振り返る。
実写で撮影され、ロトスコープでアニメ化された本作。実際に森山未來が演じたあんずちゃんの映像とアニメの比較動画を上映すると山下監督は「動きとかタイミングとかは実写のタイミングなのですが、やっぱりあんずちゃんはフォルムも変わってますし、久野さんの方でもう一度演出をやり直してくれました」と森山をあんずちゃん化する際の久野監督の苦労についてコメント。続いて「あんずちゃんのようなデフォルメの強いキャラクターをどのように表現するかというのをかなり探った気がします。パイロット版のときはもうちょっとリアルな感じで、あんずちゃんの動きももう少し細かくしてたりしたのですが、細かすぎると絵の奥にある実写を意識させすぎてしまう、映画では潔く止めるところを作ったりしました。動きの緩急は最後まで探っていたところでもあります」と久野監督はそのこだわりを解説した。
8年前からスタートしていた『化け猫あんずちゃん』の企画。この長い道のりについて山下監督は「結果的には8年かかっちゃったなという感じですが、その間に久野さんと豊島区のPR映像を担当させていただいたり、パイロット版を作ったり段階を踏んできました。とにかく最初はこれが映画になるのかなという漠然とした不安があったのですが、それを乗り越えて、フランスとの合作になったり、とにかく形になったのが嬉しいです。実写チームとアニメチームとフランスチームとが、それぞれ別の畑の人間が奇跡的にうまく機能しています。いろんな感性の集合体のような作品になっていき、それが作品の強みになっています」と語ると、久野監督は「私は映画というものにすごく憧れがあったので、まずそれが作れたのが嬉しいです。ひょんな事から日仏合作となったあんずちゃんも日本のアニメの作り方を踏襲しているのですが、自分なりの表現方法を入れて、少し新しく見慣れないものが作れたのかなと思います」と映画への熱い想いを語り、「山下さんと組んだおかげで、生のお芝居の大切さに気づきました。アニメーションは基本的に頭のなかで描くというものなのですが、そこだけになってしまうと視野が狭くなってしまう時があります。この作品ではすごく広がりのある作品にできました」と作品の出来に自信をみせた。
イベントの最後にはアーティストの卵である多摩美の学生へ久野監督と山下監督よりメッセージが。
久野監督は「あんずちゃんは作るのに時間がかかった作品です。皆さんも作品をなかなか世に出せなくて焦る気持ちもあると思うのですが、時間をかけて見せたい人たちに伝わるように作るということも大切だと思うので、自分の表現を突き詰めて自分がやりたいことを本当に見せられるようになってくれたらいいなと思います」、山下監督は「本気になって作品を一つ作って、それで将来が決まるわけではなく、将棋でいうといひとつコマが進んだくらいのことです。ただ、社会というものはそれの連鎖になっていて、作ったものがその次に繋がっていきます。まず学生時代はとにかく自分の恥ずかしいものを含んだ大きな名刺をひとつ作って欲しいなと思います。そうしていくとどんどん面白い人に出会えるようになって、そうやって僕も久野さんと出会って、まさか自分がアニメを作るようになるとは思いませんでした。過去に作ってきたものが今に繋がったり、この先に繋がったりするので、一個一個手を抜かずにやっていくと面白い人に出会えるので、頑張って行ってほしいなと思います」と学生たちにエールを贈りイベントは幕を閉じました。
☆作品詳細
化け猫あんずちゃん
2024年7月19(金) 全国公開
監督:久野遥子・山下敦弘
原作:いましろたかし『化け猫あんずちゃん』(講談社 KCデラックス 刊)
キャスト(声・動き):森山未來 五藤希愛
青木崇高 市川実和子 鈴木慶一 水澤紳吾 吉岡睦雄 澤部 渡 宇野祥平
制作プロダクション:シンエイ動画×Miyu Productions
脚本:いまおかしんじ 音楽:鈴木慶一 編集:小島俊彦
キャラクターデザイン:久野遥子 作画監督:石舘波子 中内友紀恵
美術監督& 色彩設計:Julien De Man コンポジット開発:Guillaume Cassuto
撮影監督:牧野真人 CG監督:飯塚智香 音響監督:滝野ますみ
実写撮影協力:マッチポイント
撮影:池内義浩 録音:弥栄裕樹 スタイリスト:伊賀大介
主題歌:「またたび」佐藤千亜妃(A.S.A.B)
プロデューサー:近藤慶一 Emmanuel-Alain Raynal Pierre Baussaron 根岸洋之
製作:化け猫あんずちゃん製作委員会
配給:TOHO NEXT
公式サイト:ghostcat-anzu.jp
公式X:@ghostcat_anzu
INTRODUCTION
山下敦弘×久野遥子×森山未來で 化け猫!
多摩美術大学在学中に制作した短編アニメーション「Airy Me」が第17回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門新人賞受賞。アニメーション・イラストレーター・漫画家と各方面から熱い支持をうける気鋭のクリエイター久野遥子監督。
『カラオケ行こ!』(24)の大ヒットも記憶に新しい、長年映画ファンから絶大な支持を集め続ける日本映画名手・山下敦弘監督。
主役である「あんずちゃん」に、『ボクたちはみんな大人になれなかった』(21)、『ほかげ』(23)他、数々の話題作に出演し、俳優だけでなく多岐に渡るジャンルで国内外で唯一無二の活躍を続ける森山未來。
日本の芸術分野をけん引する才能が集結し、いましろたかし原作の『化け猫あんずちゃん』がアニメーション映画化!
今年5月に行われる第77回カンヌ国際映画祭の「監督週間」に日本のアニメーションとして6年振りに選出され、さらに6月に開催される世界最古・世界最大のアニメーション映画祭であるアヌシー国際アニメーション映画祭2024の「コンペティション部門」でも出品が決定。37歳の化け猫に世界が大注目!
本作では実写で撮影した映像からトレースし、アニメーションにする「ロトスコープ」という手法を採用。従来では、演奏シーンやダンスなど人間の動きをリアルにアニメーション化する事で用いられる事が多いのだが、本作では撮影現場でしか生まれない「お芝居」をアニメーションに落とし込む事に注力している。 もうひとつ大事な要素が、セリフの同時録音である。その現場でしか生まれない掛け合いによる役者の「声」も同時に録音する必要がある。 その為、実写班には山下監督を中心とし、実写映画界の優秀なスタッフが集結し、映画撮影そのままの撮影を敢行。 そして、その映像や音声をもとに久野監督が緻密な芝居から抽出するエッセンスを吟味し、スタッフと共にアニメーションを作り上げている。
あの森山未來が実写映画同様に動き話す姿を撮影しておきながら、映画館で目にするのはアニメーションで表現された完全に化け猫の“あんずちゃん”という、贅沢ともいえる、徹底的にこだわった制作方法。実写で役者が演じた登場人物たちはその魅力を活かしながら、久野監督デザインによるキュートなキャラクターに変貌をとげ、ロトスコープアニメーションならではの生き生きとした動き・表情で動き回る特別な仕上がりは可愛くもどこか現実味のある未だかつて観た事がないアニメーション映画となっている。
脚本は『苦役列車』(12)でも山下監督とタッグを組み、監督としてクリストファー・ドイルと撮影タッグを組んだ異例の経歴を持ついまおかしんじが執筆。撮影に『リンダ リンダ リンダ』(05)『苦役列車』 など多くの山下作品でカメラを握る池内義浩。衣装は『シン・ウルトラマン』(22)『竜とそばかすの姫』(21)など実写、アニメーション関わらずアーティスト、演劇と幅広いジャンルで活躍し続ける伊賀大介が担当。森山の他キャスト(声・動き)に、あんずちゃんと共に過ごす少女“かりん”を山下監督の『1秒先の彼』(23)でもフレッシュな魅力を発揮した五藤希愛、かりんの父を青木崇高、母を市川実和子、おしょーさんを鈴木慶一、さらに水澤紳吾、吉岡睦雄、宇野祥平ら山下組常連の名バイプレイヤーたちも集結。鈴木は本作の音楽も担当し、味のある世界観に彩を加える。また主題歌を佐藤千亜妃が本作のための新曲『またたび』を書き下ろした。
実写映画の精鋭たちが勢ぞろいする中アニメーションには、アートディレクターをアカデミー賞ノミネート作品である『レッドタートル ある島の物語』(16)で背景を担当したJulien De Man。コンポジット開発にはイギリスでVFXアーティストと活躍するGuillaume Cassutoが参加。キャラクターデザインは監督である久野が自ら手掛け、作画監督を石舘波子(『ペンギン・ハイウェイ』(18)作画監督)、中内友紀恵(『あはれ!名作くん』作画)が務めている。本作ならではの最強の布陣が実現した。
また、アニメーション制作では『クレヨンしんちゃん』や『ドラえもん』で知られ、『窓ぎわのトットちゃん』など繊細な芝居を得意とするスタジオである「シンエイ動画」と、カンヌ国際映画祭やアヌシー国際映画祭で数々の賞を受賞し、新進気鋭のフランスのスタジオ「Miyu Productions」が長編として初の日仏共同にてアニメーションを制作。 シンエイ動画がキャラクターの動きを描き、Miyu Productionsが背景美術と色彩を担う。
実写×アニメーション。
日本×フランス。
ジャンルや国を超えた才能がタッグを組んだ、前代未聞のアニメーション映画ついに公開!
STORY
雷の鳴る豪雨の中。お寺の和尚さんは段ボールの中で鳴いている子猫をみつける。その子猫は「あんず」と名付けられ、それは大切に育てられた。
時は流れ、おかしなことにあんずちゃんはいつしか人間の言葉を話し、人間のように暮らす「化け猫」になっていた。
移動手段は原付。お仕事は按摩のアルバイト。現在37歳。そんなあんずちゃんの元へ、親子ゲンカの末ずっと行方知れずだった和尚さんの息子・哲也が11歳の娘「かりん」を連れて帰ってくる。しかしまた和尚さんとケンカし、彼女を置いて去ってしまう。
大人の前ではいつもとっても“いい子”のかりんだが、お世話を頼まれたあんずちゃんは、猫かぶりだと知り、次第にめんどくさくなっていく。
かりんは哲也が別れ際に言った「母さんの命日に戻ってくるから」という言葉を信じて待ち続けるも、一向に帰ってこない。母親のお墓に手を合わせたいというささやかな望みさえ叶わないかりんは、あんずにお願いをする。「母さんに会わせて」
たった一つの願いから、地獄をも巻き込んだ土俵際の逃走劇が始まるんだニャ。
映画『化け猫あんずちゃん』予告編【2024年7月19日公開】
https://youtu.be/BhF63BAHtmU
映画『化け猫あんずちゃん』特報【2024年7月公開】
https://youtu.be/_efHmCt9FLQ
©️いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会